2017年3月23日木曜日

バイオ医薬特許実験方法入門(1)

バイオ医薬系の実験方法の基本を学ぶ上で、物質やその濃度についての表現を理解しておくことが重要です。

1. まず、「物質」のイメージをつかみましょう。

特許明細書に出現する物質の表現として、matter, substance, material  があります。
それらの単語のイメージは、以下のように考えればいいのではないでしょうか。



material: 具体的なものというよりはおおまなかもの
    (固体、液体、気体などを含めた一般的概念または集合名詞としての物質)
substance: 具体的なもの
    (個々の物質)
material: substance を構成する材料のようなもの
すなわち、
matter → substance → material
抽象的      実体的         材料的
と考えられます。
また、見方を変えると以下のような単純化した図で表現できます。



(引用:

物質(matter)は、複数の物質(substance)が混ざり合った混合物(mixture)と1つの純粋な物質(pure substance)とに分類されます。混合物(mixture)は、不均一(不均質)混合物(heterogeneous mixture)と均一(同質)混合物(homogeneous mixture)に分類されます。不均一混合物は、部分部分の性質が一定ではない混合物であり、均一混合物はどの部分をとっても同一の性質を呈している混合物です。また、純物質(pure substance)は、化学結合力によって結合した2種以上の元素からなる純物質である化合物(compound)と1種類の元素のからなる単体(element)に分類されます。

ところで、物質の三態という言葉があります。

物質の三態(Phases of matter): 固体(solid)−液体(liquid)−気体(gas)

すべての物質は、温度と圧力が決まると、固体・液体・気体のいずれかの状態をとります。 これを「物質の三態」といいます。

 2. 溶液(solution)と懸濁液(suspension) という表現も明細書に頻出します。

違いは、融けているか、ただ懸濁された(濁ったような)状態なのかです。

コロイド(colloid)という言葉も簡単に説明しておきます。



コロイドは、物質(分散質)の分散状態を表す表現であり、媒体(分媒)の中に分散している粒子が一定の定常状態を保っている系をいいます。コロイド溶液は、状態によって、流動性のないゲル(gel)(例えば、寒天、ゼラチン、豆腐)と流動性のあるゾル(sol)があります。なお、コロイド溶液を形成する液体が水の場合、ヒドロゲル(hydrogel)といいます。


3.次に、濃度について簡単に説明します。

溶液は、溶媒(例えば、水)に溶質(例えば、食塩)が溶けたものです。
溶液 (solution) = 溶質(solute)+溶媒(solvent



溶液に含まれる溶質の濃度は、明細書の実施例では、「質量%」という言葉が頻出します。

「質量% (mass%) 」は、「質量パーセント濃度」を意味しています。
質量パーセント濃度(percent concentration of mass) [%] = 溶液[g]中の溶質[g]の割合[%]

言い換えると、
Percent by mass (m/m) is the mass of solute divided by the total mass of the solution, multiplied by 100 %.

質量パーセント濃度[%] = 溶質[g]/(溶質[g]+溶媒[g]) = 溶質[g]/溶液[g] × 100 

(例) 水190gに食塩水10gを溶かして得られる溶液中の食塩水の質量パーセント濃度を求める。

質量パーセント濃度[%] = 10[g]/(10[g]+190[g]) = 10[g]/200[g] × 100 = 2.1% (明細書では、質量で表していることをはっきりさせるために、2.1質量%(2.1 mass%)と表現します)

明細書では、「重量%(weight%)」という表現も頻出します。しかし、
特許庁は、SI単位系(The International System of Units)を推奨。重さの単位としては質量(単位:g)を用いるので、好ましい表現とは言えません。
(参考:http://www43.atpages.jp/abc3/data/pdf/patents/f026.PDF

ところで、質量とは “Mass is constant and, unlike weight, is not affected by gravity” です。
すなわち、質量は、地球上、どこで測定しても変わらない値です(重量は重力による影響を受けるので変動します)。

なお、特許明細書では、成分の割合を具体的な単位で表さないで、「質量部」(parts by mass) 、「重量部」 (parts by mass) を多用します。%(百分率)の場合、全体を100としたときの割合となるので、100%が何かを示さなければならなくなるからです。

また、注意しなければならないのは、「モル」という言葉です。

翻訳の際、特に英訳の場合、”mol”(モル)と(モル濃度)とを混同しないように!!

1モル(mol)は、一言で言えば、6.02×1023個(アボガドロ数という)の集団を表します。

M”は、モル濃度(molar concentration, molarity) [mol/Lmol/dm3、またはmol/m3]の単位です。
モル濃度は、単位体積の溶液中の溶質の物質量(溶液1 l中に溶けている溶質のモル数)を意味します。

(例文)

合金が、少なくとも約60質量パーセントの鉄と、約15〜約30質量パーセントの範囲内のクロムと、約3〜約4.5質量パーセントの範囲内のタングステンとを含む。
The alloy contains at least 60 mass% iron, about 15-30 mass% chromium and about 3-4.5 mass% tungsten. (特許庁、weblio
また、0.51.0質量パーセントのニームベースの組成物と混合することによって窒素肥料を被覆する。

The nitrogenous fertilizer is coated by being mixed with 0.5-1.0% by weight neem based composition.(特許庁、weblio


2017年3月18日土曜日

4月から医学翻訳や特許翻訳を学習する人へ

医学系の翻訳講座には、解剖学や生理学、細胞生物学の教科書が使われる講座が複数あります。

しかし、現場では教科書なんて必要ではありません。

ネットで調べれば十分。

そんなことを言えるのは、既に科学の素養を身につけた方でしょう。

文系の人は、せっかく学習するなら、誰かの指導のもとで、

内容をまとめて説明してもらったり、重要なところを指摘してもらいながら、

教科書の一冊ぐらい、読んでおいたほうがいいように思います。

なぜ、教科書を読むか?

実際の翻訳現場では無関係ことも多く含まれます。

しかし、特定の技術だけをつまみ食いするのではなく、教科書を読むって大事です。

もちろん、覚えるためではありません。

特定の技術を含む学問全体の流れを大まかに「感じる」ためです。

その学問の言葉の大海を肌で感じるためです。

学問は歴史であり哲学です。教科書は学問の歴史書であり哲学書です。

1つの教科書を幹とし、その幹を飾る枝葉として他の教科書や論文、中高参考書、入門書等に触れる。

そんな時期が半年や1年、あってもいいように思います。

特許翻訳は奥深いものです。

つまみ食い的な学習で特許翻訳ができると感じるようでは、まだ初心者です。

翻訳の際、大きな落とし穴に落ちいる可能性があります。

落とし穴に落ちて気がついてください。

とりあえず、小さな落とし穴の例を挙げます。

英語に自信がある文系翻訳者であって教科書を一通り学んでいない翻訳者に見られるミスの例

遺伝子変異に関する基本的な用語の訳にミスが見られます。

deletion, insertion, substitution, duplication

これらの単語は、それぞれ塩基の欠失、挿入、置換、重複 を意味しています。

簡単な単語なので、そのまま単語に関する知識に基づいて、
使用されている背景や意味を考えずに訳しています。

教科書に出てくる基本的な表現を誤ると、
「畑違いの人が翻訳しているな」とすぐ見破られます。

急がば回れです。
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ILC国際語学センター(東京校)(http://www.ilc-japan.com/tokyo/)の特許翻訳勉強会(OB等による自由参加の勉強会)一参加者のブログです。

「パテント」を読もう

「パテント」を読もう。 特許事務所では、日本弁理士会の情報誌「パテント」が所員の目の届くところに置かれています。この雑誌の記事の一部は、インターネットでも読むことができます。 http://www.jpaa.or.jp/?cat=372 この月刊誌に掲載される記事は、弁理士のみならず技術者や翻訳者にとってもとても勉強になる内容です。 例えば、2017年1月号では、特集が「特許」。藤村氏の「発明トハ何ソヤ」という解釈論は参考になります。 日本の特許法では、「発明は思想」になりますが、米国特許法では「思想」や「形体」の表現はありません。 クレーム文言の構造的限定や構成要素間の相互作用等、日本とは異なって米国ではしっかりと記載しなければならない理由はそこにあるのでしょう。

2017年3月15日水曜日

【気になるバイオ医薬特許用語】antidote, antitoxin

解毒薬(解毒剤)のことを antidote” と言います。

antidote”に似た表現として、“antitoxin”  があります。

antidote”(解毒薬)は、毒物に作用して毒物の毒性作用を中和する薬物です。アンモニアなどの化学物質のみならず、ミルクや活性炭までもが該当します。

一方、“antitoxin” (抗毒素)は、抗体です。岩波生物学辞典によれば、
「特定の毒素またはそれを不活化したもの(トキソイド)を抗原としてウマなどの動物を免疫して作らせた通常は毒素を中和する能力のある抗体」です。

“antidote” を語源から解説された文章を紹介します。

語源から解説された文章を紹介します。

『「与える」の doは人間の病気についても活躍します。例えば人間の体の中に毒物が入って細胞を殺してしまうと人間は最終的には死んでしまいます。この毒物にanti-(反対して)抵抗力を「与える」のがantidote (解毒剤)です。antidoteも与える量によっては単なる「毒」にもなってしまいます。まずどの位の量の薬を与えるか注意が必要です。そこでdose (服用量)が薬などを「与える適量」を表して使われます。』 
(引用: asahi.com 【語源で探る英単語】 http://www.asahi.com/english/weekly/0311/05.html

解毒剤に関係した特許を調べていたところ、「うっかりミス」して翻訳されたものを発見しました。

特定の分野に精通した翻訳者は、一字一句丁寧に確認しないで、うっかりミスします。

チェッカーや技術者までもが数値や抜けのミスには慎重であっても「翻訳者のうっかりミス」に気がつかない場合があります。

”antidote” (解毒薬) と “antibody” (抗体) 、視覚的に英単語を間違えて捕らえてしまう場合があるようです。その例を紹介します。

米国出願されたものを翻訳して日本で出願された特許出願公開第2017-043632号(http://patent.conceptsengine.com/p/2017043632)です。

発明の名称では、「抗体」となっていますが、要約書では、「解毒剤に関する」となっています。

気になるので米国出願されたものを調べてみます。

調べ方は、日本国出願されたものに記載されている「優先権主張番号60/976,343」と「優先主張国 米国」から、Google検索で、「US  60/976,343 patent 」で検索すればヒットします。(https://www.google.ch/patents/US9023796

タイトルは、”Antidotes for factor XA inhibitors and methods of using the same” となっています。

“Antidotes” を “Anibodies” と読んでしまったのでしょう。

日本出願の明細書に記載されている代理人を見れば、どの特許事務所だということがわかります。一流と言われる特許事務所でも「うっかりミス」があるようです。

「発明の名称」や「従来技術」での「うっかりミス」は取り返しがつきますが、権利範囲を特定する「特許請求の範囲」の「うっかりミス」は致命傷になります。

“antib—“ や“antid— “で始まる単語、きちんと最後まで読んで意味を確認しましょうね。

antibacterial  抗菌性
antibilious     抗胆汁症の
antibiotic      抗生物質
antidepressant   抗鬱薬
antidiabetic       抗糖尿病薬
antidiuresis        抗利尿

2017年3月14日火曜日

【気になるバイオ医薬特許単語】  theragnostic、 theranostics

【気になるバイオ医薬単語】  theragnostic、 theranostics

どちらも「英辞郎on the WEB」(https://eow.alc.co.jp/)では「該当件数:0件」になります。

「バイオキーワード集」 では、

「治療(=therapy)と診断(=diagnosis)を同時に行うことのできる薬剤のことで,抗がん剤を内包した造影剤分子などの研究が近年行われている.」と説明されています。

実際は、癌のみならず治療と診断を融合した医薬品や医療機器に関連した言葉と思われます。

名詞:”theranostics” は、「セラノスティックス」または「セラノスティクス」です。「診断と治療の融合」を意味しています。「セラノスティックス」の詳しいことは、例えば、産総研(https://unit.aist.go.jp/hri/group/2015_td-4/)のHPを参考にしてください。

形容詞として用いる場合、どのような訳語を当てればいいのでしょうか。

例えば、”thergnostic agent” でしたら、「セラノスティック薬」、「セラノスティック剤」、「診断・治療剤」が良いでしょう。

なお、“theragnostic” を用いた他の例として、超音波診断関連のシステムがあります。

”Non-Invasive Ultrasound Theragnostic System”
「非侵襲超音波診断・治療統合システム」
(参考:http://ci.nii.ac.jp/naid/110009962810



2017年3月10日金曜日

【特許明細書】オートファジーに関する特許出願明細書1

ILC国際語学センター(東京校)(http://www.ilc-japan.com/tokyo/)の特許翻訳勉強会(OB等による無料かつ自由参加の勉強会)一参加者のブログです。

勉強会で今月下旬に扱う明細書は、オートファジーに関する特許出願明細書WO2013/119377 (関連日本出願:特願2014-525205)です。

*以下の記載は必要に応じて、随時、訂正・加筆する予定です。

この明細書の一部を既に数名の方が担当して翻訳されました。それらの内容は後半で示します。

今日は、新年度、新たな気持ちでバイオ医薬特許翻訳を学ぼうとする人をサポートするため、特許のみならずバイオ医薬の勉強を少しずつしていきます。

翻訳学習者にとって大切なことは、「自分で調べ、自分で学ぶ」ことです。
特許翻訳で求められる翻訳は、直訳であって直訳ではない翻訳です。それを学ぶためには、自分で翻訳し、第三者にチェックしてもらい、チェック内容を議論していくことが大切です。

              私の考える特許翻訳者は、


単なる「翻訳マシーン」としてではなく、特許事務所で技術者として明細書作成/中間処理等も従事できる能力を備えた人です。

なぜなら、特許翻訳の産物は、特許権を得るための手段であるからです。
特許取得後の権利行使をも考えることが大事です。

特許事務所の求める翻訳者/技術者をめざしましょう。

特許明細書は科学論文+α のようなものです。

FIG. 1


米国では、論文作成してそれを仮特許出願として出願し、その後、正式の明細書を準備するという方法が採られています。
 
ところで、文系の人がバイオテクノロジーの基礎を一通り学ぶにはどうしたらいいでしょうか?
大学で使用されている教科書一冊を一通り読破することです。

FIG. 2

バイオテクノロジーの基礎は細胞生物学(分子遺伝学、生化学、etc.)です。

多くの大学で使われ、大学院受験のテキストにもなっている教科書(Essential Cell Biology 4th Ed.)をベースとして知識のみならず実験方法等の知識を学ぶ。かなりハードですが、ブログで一緒に勉強していきましょう。文系の弱みである実験方法にも力を入れていきましょう。

なお、Essential Cell Biology 4th Ed. の内容は以下の通りです。

FIG. 3

TABLE OF CONTENTS             

1. Cells: The Fundamental Units of Life
2. Chemical Components of Cells
3. Energy, Catalysis, and Biosynthesis
4. Protein Structure and Function
5. DNA and Chromosomes
6. DNA Replication, Repair, and Recombination
7. From DNA to Protein: How Cells Read the Genome
8. Control of Gene Expression
9. How Genes and Genomes Evolve
10. Modern Recombinant DNA Technology
11. Membrane Structure
12. Transport Across Cell Membranes
13. How Cells Obtain Energy from Food
14. Energy Generation in Mitochondria and Chloroplasts
15. Intracellular Compartments and Protein Transport
16. Cell Signaling
17. Cytoskeleton
18. The Cell Division Cycle
19. Sexual Reproduction and the Power of Genetics
20. Cellular Communities: Tissues, Stem Cells, and Cancer

実験方法は、遺伝子解析の基礎、タンパク質実験の基礎、免疫学実験の基礎、細胞培養の基礎、その他を押さえておきます。


では、冒頭に示したオートファジー関連の明細書の翻訳を検討していきます。

特許について、特許明細書についての説明は、後日、アップします。


今回は、具体的な訳の検討はせず、既に訳された部分をアップし、次回に説明することにします。そのための準備として、明細書に記載されたオートファジーについて、簡単に確認します。


翻訳学習者が「オートファジー」について知るには、最初にGoogle検索で調べるのが一般的です。いくつかのサイトを見て、「オートファジー」がどのような現象であるかを理解することができるでしょう。

急いでいる場合、気になるのは学問的な意味よりも、とりあえずその単語の対訳や英語表現が気になるでしょう。

単語の意味や表現は、「英辞郎」(https://eow.alc.co.jp/)と「Weblio英和/和英辞典」(http://ejje.weblio.jp/)、さらに「ウィキペディア」の英語版(https://en.wikipedia.org/)でも調べることができます。

例えば、Weblio で調べてみると、以下のような英文が出てきます。
In 1988, Osumi observed autophagy in yeast cells under a light microscope for the first time ever.
1988年、大隅氏は酵母細胞内でのオートファジーを光学顕微鏡で史上初めて観察した。
Osumi's research helped uncover the physiological significance of autophagy.
大隅氏の研究はオートファジーの生理学上の重要性を明らかにする助けとなった。
Osumi, 71, won the prize for his research on autophagy in living cells.
大隅氏(71)は生細胞内のオートファジー(自食作用)に関する研究で受賞した。
参考: (浜島書店 Catch a Wave)、weblio英和辞典・和英辞典(http://ejje.weblio.jp/


Weblio」で調べる際、気をつけなければならない点は、引用元が「特許庁」になっている英文や和文です。明細書の翻訳文が挙げられているので、必ずしも正しい表現が使われているとは限りません。「英辞郎」も精査されて訳語が載っているとは限りません。
(クイズ: 上記英文例の “microscope” ”microscopy”の違いは?)

ところで、少し生物学を学んだ人ならば、「オートファジー」は「サイトーシス」!? という疑問が生ずるかもしれません。

オートファジーは、細胞が飢餓状態になっている際に余分なものを自己消化することで栄養源を確保する現象です。細胞内分解機構である「サイトーシス」に似ています。そこで、まず、「サイトーシス」という現象について簡単に触れておきます。

Cytosis (サイトーシス、膜動輸送)
サイトーシスは、細胞内で膜が特定の物質(タンパク質など)を取り囲んで所謂「小胞」となり、他の膜や小胞と融合することで、物質などを輸送するシステムです。

Cytosis は、細胞の中から外へ、外から中へとその輸送の方向に応じて、以下のように呼ばれます。
    Exocytosis  (エキソサイトーシス、細胞外放出、開口分泌)
     Endocytosis (エンドサイトーシス、飲食作用)
Pinocytosis (“cellular dringking”) (ピノサイトーシス、飲作用)
Phagocytosis (“cellar eating”) (ファゴサイトーシス、食作用)

Cytosisのイメージ図 FIG. 4


autophagy (オートファジー、自食作用)は、endocytic pathway (エンドサイトーシス経路)の一つと考えられます。一言で言えば、細胞内のリサイクル掃除機ともいえます。不要になった細胞内小器官(ミトコンドリアなど)やタンパク質などを膜に包み込んで分解し、リサイクルに回したりします。

Exocytosis の説明図 (「エッセンシャル細胞生物学」原書3版より) FIG. 5


Endocytosis および Autophagy の説明図 (「エッセンシャル細胞生物学」原書3版より)
 FIG. 6


オートファジーの研究は、大隈良典氏によって初めて生きた酵母を材料として光学顕微鏡による観察、さらに、酵母のオートファジー関連遺伝子群 Autophagy related:APG/ATG)を同定しました(Tsukada and Ohsumi,1993)すなわち、オートファジーの研究は、大隈氏らの細胞学的観察から出発して分子遺伝学、生化学的研究へ進み、疾患との関連性なども調べられています。

東京工業大学大隅研究室HP http://www.ohsumilab.aro.iri.titech.ac.jp/

ところで、大隅氏の研究の特徴の1つとして、酵母を材料にしていることが挙げられます。
 酵母は、真核単細胞生物であり、実験室で簡単に操作でき、増殖が早いなどの利点があります (参考:http://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/HM_blog/?p=97 )。

endocytosis autophagy の違いについて

もう少し分子レベルで検討すると、通常のendocytosis とは異なり、autophagy  「ユビキチン非依存的タンパク質分解」であることです。ここで、水島氏のHP http://square.umin.ac.jp/molbiol/research/proffessional.html )の言葉と図を参照します。

FIG. 7



(上段)オートファジーではまず細胞質の一部が隔離膜によって取り囲まれてオートファゴソームが形成される。次にオートファゴソームの外膜がリソソーム膜と融合しオートリソソームとなり、内容物が分解される。
 (下段)ユビキチン・プロテアソーム系では、ユビキチン鎖で標識された基質が、プロテアソームによって分解される。これは厳密な認識機構をもった選択的タンパク質分解系である。

「ユビキチン・プロテアソーム系」(ubiquitin-proteasom system) という難しい表現が出てきました。この系の発見者は、2004年のノーベル化学賞を受賞しています(http://www.chem-station.com/blog/2004/11/2004%E5%B9%B4nobel.html)。

では、基本的なところを確認しておきましょう。

タンパク質はどのようにできるか?
DNA上にあるタンパク質の遺伝情報がmRNAに転写され、さらに翻訳されて複数のアミノ酸の連なったものができあがり、それが折りたたまってタンパク質になります。

セントラルドグマ — 遺伝情報の流れ
(「エッセンシャル細胞生物学」原書3版より)

FIG. 8



mRNA上の遺伝情報を元にタンパク質合成される場は核の外です。核の外で合成されたタンパク質(まだ完全なタンパク質ではありません)は、ゴルジ体(Golgi body)と呼ばれる複合的な膜系からなる細胞小器官に入ります。工場に原料が届くようなものです。その工場で修飾・加工されます。工場の作業員としてシャペロン(chaperone)さんが活躍します。タンパク質が正しい高次構造になるお助け役です。その後、完成品は小胞で包装されて、さらに別の送付先へと運ばれてきます。


FIG. 9




不良品は、ライソゾーム(lysosome)に送られて加水分解されます(リソゾーム系)。または、ユビキチン(ubiqutin)というタンパク質のラベルが結合し、タンパク質複合体であるプロテアソーム(proteasome)によって分解されます(ユビキチン‐プロテアソーム系)。
一方、オートファジーは、不要な細胞小器官(ミトコンドリアなど)や様々な細胞侵入細菌を除去するために、標的を二重膜構造体(オートファゴソーム)で取り囲み、リソソームと融合して標的を分解します。

FIG. 10



大隅氏の特許出願について見てみましょう。大隅氏が発明者として記載されている特許出願は2件です。
(1)特開2000-060574号(出願日: 1998年8月21日)
【発明の名称】オートファジーに必須なAPG12遺伝子、その検出法、その遺伝子配列に基づくリコンビナント蛋白の作製法、それに対する抗体の作製法、それに対する抗体を用いたApg12蛋白の検出法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】  配列番号1、2、3で表されるオートファジーに必須なAPG12遺伝子。
【請求項2】  相補的DNAあるいはRNAを用いた請求項1記載のAPG12遺伝子の検出法。
【請求項3】  請求項1記載のAPG12遺伝子配列に基づくリコンビナント蛋白の作製法。
【請求項4】  請求項3記載のリコンビナント蛋白の全長または一部に対する抗体の作製法。
【請求項5】  請求項3記載のリコンビナント蛋白に対する抗体を用いたApg12蛋白の検出法。
出願人      株式会社LTTバイオファーマ
経過: 審査請求しておらず出願は取り下げ

(2)特開2002-348298号(出願日:2001年5月23日)

【発明の名称】蛋白質とホスファチジルエタノールアミンの結合体
【特許請求の範囲】(の一部)
【請求項1】  リン脂質と蛋白質がアミド結合で共有結合したリン脂質-蛋白質結合体。
【請求項2】  アミド結合が、リン脂質のアミノ基と蛋白質のC末端のカルボキシル基とによるアミド結合である請求項1に記載のリン脂質-蛋白質結合体。
【請求項3】  リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミンである請求項1又は2に記載のリン脂質-蛋白質結合体。
【請求項4】  蛋白質が、C末端がグリシンであるApg8又はその誘導体である請求項1~3のいずれかに記載のリン脂質-蛋白質結合体。
出願人 科学技術振興事業団
経過: 第29条柱書違反(産業上利用できない発明)と第36条違反(記載不備)

いずれの特許出願も特許権を得られませんでした。その原因をここでは言及しないことにします。

参考) 
特許情報プラットフォーム
発明該当性及び産業上の利用可能性
明細書の記載要件について

このようなわけで、大隅氏の特許出願ではなく、オートファジーに関する他の特許出願明細書WO2013/119377 (関連日本出願:特願2014-525205)を使って、オートファジーの特許翻訳をしてみることにしました。
これらの特許は、例えば、以下のサイトで調べることができます。

参考)WO2013/119377 (https://www.google.com/patents/EP2812347A1?cl=en )
特許情報プラットフォーム ( https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage )

次回のブログでは、以下の英文と訳を検討します。

なお、特許事務所では、初心者であっても実際に明細書作成や翻訳をおこない、それを先輩がチェックして育てていきます。
序論
The molecular cascade that regulates and executes autophagy has been the subject of numerous comprehensive reviews1-4.
したがって、オートファジーは生化学的に(Atg8-PEもしくはLC3-IIの生成を評価することによって)または顕微鏡で微視的に(「生化学的に」と表現を合わせる)(例えば蛍光標識されたAtg8もしくはLC3の局在パターンを観察することによって)検出することができる。
Our laboratory discovered one of the core essential autophagy genes, beclin 16.  Beclin 1 is the mammalian ortholog of yeast Atg6/Vps307.
ベクリン1の発現および/または機能の低下は、癌、アルツハイマー病、ハンチントン病とデスミン関連心筋症対する感受性罹患率(罹病性)の増大と、微生物病態形成における変化と、アポトーシス遺骸アポトーシスによる死細胞のクリアランス(又は「除去」)および発生(又は「発達」)における異常;およびと、老化に関連づけられているにつながる
ベクリン1が過剰発現するとオートファジーは十分に誘導され11、および本発明者らの研究室では、ヒト癌において活性化される、上皮増殖因子受容体とAktとを含む2種の発癌性の増殖シグナル分子が共にベクリン1と相互作用し、ベクリン1のオートファジー機能を阻害することが示された。
【0001】 
[0002] This invention was made with government support under Grant Number U54A1057156 awarded by the National Institutes of Health (NIH).  The government has certain rights in the invention.
【発明の概要】
The invention provides methods and compositions for inducing autophagy.
【0006】
In one aspect the invention provides an autophagy-inducing compound or composition comprising (a) an autophagy-inducing peptide comprising Beclin 1 residues 269-283 immediately flanked on each terminus by no more than twelve naturally-flanking Beclin 1 residues, wherein up to six of said residues 269-283 may be substituted, and (b) a first heterologous moiety, e.g. that promotes therapeutic stability or delivery of the compound.
【0007】
Active such compounds have been developed with a variety of alternative structures and formulations; in various particular embodiments, such as wherein: the peptide is N-terminally flanked with T-N and C-terminally flanked by T; the peptide comprises at least one of F270, F274 and W277; the peptide comprises at least one substitution, particularly of H275E, S279D or Q281 E; the peptide is N-terminally joined to the first moiety, and C-terminally joined to a second heterologous moiety; the peptide is joined to the first moiety through a linker or spacer; the first moiety comprises a transduction domain, including: protein-derived (e.g. tat, smac, pen, pVEC, bPrPp, PIs1, VP22, M918, pep-3), chimeric (e.g. TP, TP10, MPG.DELTA.), and synthetic (e.g. MAP, Pep-1, oligo-Arg) cell-penetrating peptides; the first moiety comprises a homing peptide, such as RGD-4C, NGR , CREKA, LyP-1, F3, SMS, IF7 or H2009.1; the first moiety comprises a stabilizing agent, such as a PEG, oligo-N-methoxyethylglycine (NMEG), albumin, an albumin-binding protein, or an immunoglobulin Fc domain; the peptide comprises one or more D-amino acids, L-.beta.-homo amino acids, D-.beta.-homo amino acids, or N-methylated amino acids; the peptide is cyclized; the peptide is acetylated, acylated, formylated, amidated, phosphorylated, sulfated or glycosylated; the compound comprises an N-terminal acetyl, formyl, myristoyl, palmitoyl, carboxyl or 2-furosyl group, and/or a C-terminal hydroxyl, amide, ester or thioester group; the compound comprises an affinity tag or detectable label; and/or the peptide is N-terminally joined to the first moiety, and C-terminally joined to a second heterologous moiety comprising a detectable label, such as a fluorescent label.
Particular embodiments include all combinations and subcombinations of particular embodiments, such as wherein: the peptide is N-terminally flanked with T-N and C-terminally flanked by T, the first moiety is a tat protein transduction domain linked to the peptide through a diglicine linker; and the peptide is N-terminally flanked with T-N and C-terminally flanked by T, the first moiety is a tetrameric integrin .alpha.(v).beta.(6)-binding peptide known as H2009.1, linked to the peptide through a maleimide--PEG(3) linker.
In another aspect the invention provides a method of inducing autophagy, comprising administering to a person in need thereof an effective amount of a subject compound.
【0010】
The invention also provides methods and compositions for identifying modulators of Beclin -1-GAPR-1 interaction.
【0011】

[課題1」Aさんの訳とBさんのチェック。他に訂正すべき箇所はないか?

【背景技術】
INTRODUCTION

 オートファジーを調節し遂行(「実行」とする方が多い)する分子カスケードは、多数の包括的レビューの主題になっている1-4

The identification of signals that regulate autophagy and genes that execute autophagy has facilitated detection and manipulation of the autophagy pathway5.

オートファジーを調節するシグナルとオートファジーを遂行する遺伝子とを特定することにより
、オートファジー経路の検出および操作が容易になってきている


Phosphatidylethanolamine (PE) conjugation of yeast Atg8 or mammalian LC3 results in a nonsoluble form of Atg8 (Atg8-PE) or LC3 (LC3-II) that stably associates with the autophagosomal membrane.

酵母Atg8または哺乳動物LC3がホスファチジルエタノールアミン(PE)と結合すると、オートファゴソーム膜に安定に結合する不溶型のAtg8(Atg8-PE)またはLC3(LC3-II)がもたらされるになる


Consequently, autophagy can be detected biochemically (by assessing the generation of Atg8-PE or LC3-II) or microscopically (e.g. by observing the localization pattern of fluorescently tagged Atg8 or LC3).




 本出願者ら(「我々」としてもよい)の研究室ではコア必須オートファジー遺伝子オートファジーに必須なコア遺伝子の一つであるベクリン1が発見された。 ベクリン1は酵母Atg6/Vps30の哺乳動物オルソログである


It interacts with the class III phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K), Vps34, and is involved in the first step of autophagosome formation8, the nucleation of the isolation membrane (also known as phagophore) at the endoplasmic reticulum (a process called autophagic vesicle nucleation).

ベクリン1は、クラスIIIホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)であるVps34と相互作用し、およびオートファゴソームの形成の第1段階、すなわち小胞体での隔離膜(ファゴフォアとしても知られている)の核形成(オートファジー小胞核形成と称されるプロセス)に関与している。

Gene knockout/knockdown studies indicate a conserved requirement for ATG6/beclin 1 in autophagy in plants, slime molds, nematodes, fruit flies, mice, and human cells9.

遺伝子ノックアウト/ノックダウンの研究により、植物、粘菌、線虫、ショウジョウバエ、マウスおよびヒト細胞のオートファジーにおいてATG6/ベクリン1の保存必要条件が必要であることが示されている
→文献9の内容からこのような訳になる。conservedをどのように訳出するかが悩みどころ。進化の過程で変化せずに保存されてきたという意味。

Decreases in Beclin 1 expression and/or function have been linked to increased susceptibility to cancer, Alzheimer's disease, Huntington's disease, and desmin-related cardiomyopathy; alterations in microbial pathogenesis; defects in apoptotic corpse clearance and development; and
aging9.

developmentが何を意味するのかこの文脈からは分かりにくい。
→;を使用しなくても、~と、~と、~とで表現できることもある。

Beclin 1 encodes a 450 amino acid protein with a central coiled coil domain.

ベクリン1は中心コイルドコイルドメインを有する450アミノ酸タンパク質をコードする。
→「450アミノ酸タンパク質」は450個のアミノ酸からなるたんぱく質のこと。

Within its N' terminus, it contains a BH3-only domain, which mediates binding to anti-apoptotic molecules such as Bcl-2 and Bcl -xL10.

アミノ酸タンパク質のN末端内にはBH3のみのドメインが含まれておりBH3のみのドメインは、Bcl-2およびBcl-xLなどの抗アポトーシス分子への結合を仲介媒介するBH3のみのドメインが含まれている10

以下はまだチェックしていないので、次回チェックはここから

The most highly conserved region, referred to as the evolutionarily conserved domain (ECD), spans from amino acids 244-337, which is important for its interaction with Vps3410.

進化的に保存されたドメイン(ECD)と称される最もよく保存された領域は、アミノ酸244~337に及んでおり、Vps34との相互作用にとって重要である10

Besides Vp34 and Bcl-2 family proteins, Beclin 1 has numerous other binding partners, including Atg14 (another core autophagy protein), UVRAG (a protein that functions in autophagosomal maturation), Rubicon (a negative regulator of the Beclin 1/Vps34 complex), and Ambral (a positive regulator of the Beclin 1/Vps34 complex)9.

Vps34およびBcl-2のファミリータンパク質以外に、ベクリン1には他にいくつかの結合パートナー、例えばAtg14(別の中心的なオートファジータンパク質)、UVRAG(オートファゴソーム成熟において機能するタンパク質)、ルビコン(ベクリン1/Vps34複合体の負の調節因子)およびアンブラール(ベクリン1/Vps34複合体の正の調節因子)がある

In addition, Beclin 1 has been reported to interact with certain receptors and immune signaling adaptor proteins, including the inositol 1, 4, 5-triphosphate receptor (IP3R), the estrogen receptor, MyD88 and TRIF, and nPIST, as well as certain viral virulence proteins such as HSV-1 ICP34, KSHV vBcl-2, HIV-1 Nef, and influenza M29.

加えて、ベクリン1は、いくつかの受容体と免疫シグナルアダプタータンパク質、例えば、イノシトール1,4,5-三リン酸受容体(IP3R)、エストロゲン受容体、MyD88とTRIFおよびnPIST、ならびにHSV-1 ICP34、KSHV vBcl-2、HIV-1 NefおよびインフルエンザM2などのいくつかのウイルス性毒性タンパク質と相互作用することが報告されている

Overexpression of Beclin 1 is sufficient to induce autophagy11, and our laboratory has shown that two oncogenic growth signaling molecules activated in human cancers, including the epidermal growth factor receptor and Akt, both interact with Beclin 1 and inhibit its autophagy function.


[課題2]Cさんの訳

Autophagy-Inducing Peptide
【発明の名称】オートファジー誘導ペプチド
Abstract
【書類名】要約書
An autophagy-inducing compound comprises an autophagy-inducing peptide comprising beclin-1 residues 269-283 and a heterologous moiety that promotes therapeutic stability or delivery of the compound.  The compound may be used to induce autophagy and in assays with beclin-1 binding partners.
要約
オートファジーを誘導する化合物は、ベクリン1残基269~283を含むオートファジー誘導ペプチドと該化合物の治療安定性または送達を促進する異種部分とを含む。この化合物は、オートファジーの誘導に使用することができるほか、ベクリン1の結合パートナーでの評価に使用することができる。

【書類名】明細書

[0001] Applicants claim priority to U.S. Ser. No. 61/597,741, filed: Feb. 11, 2012 and is a continuation of PCT/US13/22350 filed: Jan. 20, 2013.
 出願人らは、2012年2月11日に出願された米国特許公開第61/597,741号公報及び2013年1月20日に出願されたPCT/US第22350号公報の継続出願の優先権を主張するものである。

【0002】
 本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)により認可された認証番号第U54A1057156号の下で国家支援によりなされたものである。米国政府は本発明にある権利を有している。

SUMMARY OF THE INVENTION

 本発明はオートファジーを誘導する
方法および組成物を提供する。

 本発明は、一態様で、(a)自然にフランキングしたベクリン1残基によって各端末が直接フランキングされ、最大6個が置換され得るわずか12個のベクリン1残基269-283を含むオートファジー誘導ペプチドと(b)例えば、化合物の治療安定性および送達を促進する第一のヘテロジニアス部分を含むオートファジー誘導ペプチドまたは化合物を提供する。

【0008】
 かかる活性な化合物は、様々な特定の実施形態において、例えば、ペプチドのN端末がT-Nでフランキングされ、C端末がTでフランキングされる;ペプチドがF270、 F274、W277のうちの少なくとも1つを含む;ペプチドが、とりわけH275E、S279D、またはQ281Eの置換物を少なくとも1つ含む;ペプチドのN端末が第一の部分に結合され、C端末が第二の部分に結合される;ペプチドがリンカーまたはスペーサーを介して第一の部分に結合される;第一の部分が、タンパク質に誘導された(例えば、tat, smac penpVECbPrPp, PIs1 VP22 M918pep-3)、キメラの(例えば、TP TP10 MPGDELTA.)、および合成された(例えば、MAPPep-1 oligo-Arg)細胞貫通性ペプチドを含む形質導入ドメインを含む;第一の部分が、RGD-4C NGR CREKA LyP-1 F3SMS IF7または H2009.1などのホーミングペプチドを含む;第一の部分が、PEG オリゴNメトキシエチルグリシンNMEG)、アルブミン、アルブミン結合タンパクまたは免疫グロブリンFcドメインなどの安定化剤を含む;第一の部分が1つまたは複数のDアミノ酸、Lベータホモアミノ酸、またはN端末がメチル化されたアミノ酸を含む;ペプチドが環化される;ペプチドがアシル化、アセチル化、アミノ化、ホルミル化、アミド化、リン酸化、硫酸化、またはグリコシル化される;化合物のN端末がアセチル基、ホルミル基、ミリストイル基、パルミトイル基、カルボキシル基、または2-フロシル基、および/または、C端末がアミド基、エステル基、またはチオエステル基を含む;化合物アフィニティー標識または検出可能なラベルを含む;および/または、ペプチドのN端末が第一の部分に結合され、C端末が蛍光ラベルなどの検出可能なラベルを含む、などの様々な代替構造および処方で開発されてきた。

【0009】
 特別な実施形態には、ペプチドのN端末がT-Nでフランキングされ、C端末がTでフランキングされ、第一の部分がジグリシン・リンカーを介してペプチドに結合されたTatタンパク導入ドメインである;ペプチドのN端末がT-Nでフランキングされ、C端末がTでフランキングされ、第一の部分がマレイミド(PEG(3)リンカー)を介してペプチド結合されたH2009.1として知られる四量体インテグリンα(v)β(6)に結合するペプチドである、などの特別な実施形態の組み合わせおよび部分組み合わせのすべてが含まれる。

 本発明は、別の様相で、有効な量の対象化合物を必要に応じてヒトに投与することを含むオートファジーを誘導する方法を提供する。

 本発明はまた、ベクリン1とGAPR1との相互作用を識別する方法および組成物を提供もする。