“antidote”に似た表現として、“antitoxin” があります。
“antidote”(解毒薬)は、毒物に作用して毒物の毒性作用を中和する薬物です。アンモニアなどの化学物質のみならず、ミルクや活性炭までもが該当します。
一方、“antitoxin” (抗毒素)は、抗体です。岩波生物学辞典によれば、
「特定の毒素またはそれを不活化したもの(トキソイド)を抗原としてウマなどの動物を免疫して作らせた通常は毒素を中和する能力のある抗体」です。
“antidote” を語源から解説された文章を紹介します。
語源から解説された文章を紹介します。
『「与える」の doは人間の病気についても活躍します。例えば人間の体の中に毒物が入って細胞を殺してしまうと人間は最終的には死んでしまいます。この毒物にanti-(反対して)抵抗力を「与える」のがantidote (解毒剤)です。antidoteも与える量によっては単なる「毒」にもなってしまいます。まずどの位の量の薬を与えるか注意が必要です。そこでdose (服用量)が薬などを「与える適量」を表して使われます。』
(引用: asahi.com 【語源で探る英単語】 http://www.asahi.com/english/weekly/0311/05.html)
解毒剤に関係した特許を調べていたところ、「うっかりミス」して翻訳されたものを発見しました。
特定の分野に精通した翻訳者は、一字一句丁寧に確認しないで、うっかりミスします。
チェッカーや技術者までもが数値や抜けのミスには慎重であっても「翻訳者のうっかりミス」に気がつかない場合があります。
”antidote” (解毒薬) と “antibody” (抗体) 、視覚的に英単語を間違えて捕らえてしまう場合があるようです。その例を紹介します。
米国出願されたものを翻訳して日本で出願された特許出願公開第2017-043632号(http://patent.conceptsengine.com/p/2017043632)です。
発明の名称では、「抗体」となっていますが、要約書では、「解毒剤に関する」となっています。
気になるので米国出願されたものを調べてみます。
調べ方は、日本国出願されたものに記載されている「優先権主張番号60/976,343」と「優先主張国 米国」から、Google検索で、「US 60/976,343 patent 」で検索すればヒットします。(https://www.google.ch/patents/US9023796)
タイトルは、”Antidotes for factor XA inhibitors and methods of using the same” となっています。
“Antidotes” を “Anibodies” と読んでしまったのでしょう。
日本出願の明細書に記載されている代理人を見れば、どの特許事務所だということがわかります。一流と言われる特許事務所でも「うっかりミス」があるようです。
「発明の名称」や「従来技術」での「うっかりミス」は取り返しがつきますが、権利範囲を特定する「特許請求の範囲」の「うっかりミス」は致命傷になります。
“antib—“ や“antid— “で始まる単語、きちんと最後まで読んで意味を確認しましょうね。
antibacterial 抗菌性
antibilious 抗胆汁症の
antibiotic 抗生物質
antidepressant 抗鬱薬
antidiabetic 抗糖尿病薬
antidiuresis 抗利尿
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